お知らせ


いつも高島和男的ゴルゴ13論をご拝読いただきありがとうございます。
4月の県議選まで、あと90日を切りました。
こちらのブログは選挙が終わるまでお休みさせていただきます。
ご了承の程よろしくお願いいたします。

演出国家


ゴルゴ13 (128) 演出国家 (SPコミックス) 先頃アメリカでは中間選挙が行なわれ、オバマ大統領率いる民主党は歴史的な大敗北を喫しました。「Yes!We can!」を合言葉にアメリカ史上初めての黒人大統領として熱狂する群衆に迎えられたことがつい昨日のことのように思い出されます。

 国民皆保険制度、外交政策のつまづき、貧富の差の拡大…オバマ大統領に期待していた多くの国民の心は6年が経過してもはや完全に離反し、失望に変わったといえるでしょう。

 ゴルゴ13の作品にはアメリカ大統領選をはじめ「選挙」を題材にしたものが少なくありません。「選挙」は戦いであり、その舞台が大きくなればなるほど背後で蠢く勢力争いも激化します。当然結果が出た暁には恨み、妬みが自然と沸いてくるのも世の常です。そうしたことから「選挙」は題材として扱いやすいのでしょう。

 そこで今回紹介するのは『演出国家』です。西アフリカに眠る希少な地下資源を我が物にしようとするカミュラ財閥は自分達の意のままになる国家指導者を作り出そうとします。そのためにカミュラ財閥はアメリカの大統領選で参謀として名を上げ、画期的な成果を上げたガルドを雇います。ガルドは無名の俳優を好感の持たれるルックスに整形し、認知性と語感が良い名前をつけ、分かりやすい演説とジェスチャーを訓練させることで大統領候補に仕立てます。カミュラ財閥の陰謀を察知した国連はその野望を阻止するためにゴルゴ13に依頼します。当選直後の演説の最中に「自白剤」を混入した矢で狙撃された新大統領は自らの正体を公衆の面前で暴露してしまいます。

 作品中、登場人物の会話で印象に残る台詞がありました。それは「時によって多数決が危険な民意を作り出す可能性がある。それは誰にも否定できない。なぜなら民主主義そのものの否定となる…」言葉です。現代の歴史を振り返ってみても国民が熱狂する時ほど危ういものはありません。特に我が日本人はその傾向が強いようです。

演出国家 現在アメリカはじめ多くの国々で選挙プロデュースが「生業」として成立し、今や我が国においても地方選挙にまで浸透、拡散しています。しかし「演出」は所詮付け焼刃にすぎません。人工的に一朝一夕で作り上げたものはいずれ有権者に見透かされるでしょうし、看破出来ないようでは停滞もしくは後退しかありません。

© freevector

クラウン夫妻の死


ゴルゴ13(94) 9月27日、午前11:52、長野、岐阜両県にまたがる御嶽山が突如噴火しました。紅葉シーズンの週末、しかもお昼時とあって多くの登山愛好家が頂上付近で昼食をとろうとしていた矢先のことでした。

 噴火発生時の状況が次第に明らかになっていますが、生存者の話では、噴火とともに猛烈なスピードで雨のように降ってきた大小の噴石が火口周辺の大勢の登山客の命を一瞬にして奪ったようです。救助隊の映した映像からも大量に噴出した火山灰とクレーターのような陥没跡が噴石のすさまじい威力を示していました。

 台風の通過、ぬかるんだ火山灰等、悪条件が重なる中、警察や消防、自衛隊はロープでつないで滑落を防ぐなどして二次被害対策を強化し、現在も行方不明者の発見に全力をあげています。

 さて今回紹介するのは『クラウン夫妻の死』です。この作品は1991年6月3日に発生した雲仙・普賢岳の噴火で火砕流に巻き込まれて命を落としたフランスの火山学者「クラフト夫妻」をモチーフにしています。

 テレビ局勤務の伊東は雲仙・普賢岳の噴火から1年が経過して特集番組を制作中、火砕流の直前に間一髪で脱出した人間がいるとの情報を掴み、真相を探るべく普賢岳に向かい当時の状況を調べます。その結果、東郷と名乗る人物がクラウン夫妻を追いかけるように来日し同じ宿に宿泊、火砕流直前に車で戻り、そのまま行方不明になったことが分かります。そしてその後、東郷が世界的に有名なスナイパーであること、クラウン夫妻の遺体に火砕流の破片がまるで銃弾のように突き刺さっていたことが判明します。

クラウン夫妻の死 恨みを買うはずのない火山学者夫妻の口を封じたのはアメリカ国防省であり、その理由はフィリピンのクラーク空軍、スピック海軍基地からの撤収を円滑に進めるためにピナツボ火山噴火に対する夫妻のコメントを阻止することにありました。仮に夫妻が「ピナツボ火山の噴火は一過性のもの」と発表でもしようなら、基地存続派を勢いづかせてしまうことから夫妻の殺害を依頼したのでした。

 火砕流の破片による殺害…まるで今回の噴石を予見したようなさいとう・たかを氏の慧眼に改めて感服したのでした。

 (コミックス94巻に収録)

© Brandon Wilson/AVO